思い出はホテルに置いていって2

アンケート

ヒカリがコンシェルジュから受け取ったクラブラウンジの紙を眺めている。

アキラが隣から覗き込んだ。

「何それ?」

「クラブラウンジの説明。クラブフロアに泊まる人だけが利用出来るんだよ」

「ヒカリの目的はもしかしてコレ?」

「んー。それだけじゃないけど。ここは一度行ってみたかったんだよね」

「じゃぁ、後で行ってみよう」

二人は暫く緊張を解すのも兼ねて部屋で寛いだ後、
身だしなみを整えて、クラブラウンジへと出掛けた。

「わぁ。レストランみたい」

ヒカリが真っ直ぐな感想を述べる。

アキラは相変わらず初めての場所にドギマギしている。

立ち尽くす二人にコンシェルジュが近寄ってきた。

「もしよろしければ、外がご覧頂ける席へご案内いたしましょうか?」

「お願いします」

コンシェルジュは外が眺められる絶好の席へと案内してくれた。

飲み物を尋ねられ、ヒカリはピーチティーを、

アキラはシャンパンに惹かれたものの、緊張のあまり思わずコーラを注文してしまう。

コンシェルジュは二人の注文を聞くとその場を後にした。

「あそこに並んでるものは、自由に食べていいんだってさ」

ヒカリはラウンジのテーブルに並べられたお茶菓子を指さす。

「ホテルにこういう場所があるって初めて知ったよ」

間もなく、二人の前にウェルカムドリンクが置かれた。

ヒカリはピーチティーを手に取り、香りを嗅ぐ。

「良い匂い。アキラくんはなんでコーラなの?」

「シャンパンっていう勇気が湧かなかった」

「もう!笑わせないでよ」

ヒカリは実に楽しそうだ。

アキラもヒカリの楽しそうな顔を見ると、やっと落ち着く事が出来そうだった。

何口かウェルカムドリンクを楽しんだ後、

ヒカリがテーブルに見に行ってみようと提案する。

サンドイッチやスコーン、ケーキの類やフルーツまで所せましと並んでいる。

アキラがお皿にサンドイッチを乗せようか思案していると、

それに気付いたヒカリが一言。

「ディナーもあるんだから、食べ過ぎてお腹いっぱいにならない様にね」

と、小声で囁いた。

囁かれなかったら、とりあえず全種類制覇しようかと企んでいたアキラは、

ハッとした表情を浮かべ、一番気になったサーモンサンドだけをお皿に乗せた。

その他、何種類かある食べ物でも、特に気になったものだけをお皿に移していく。

一方、ヒカリはと言うと、スコーンとフォンダンショコラ、
そして大好物のグレープフルーツを数個お皿に乗せている。

二人は揃って先程のテーブルへと戻ってきた。

「ヒカリ相変わらずグレープフルーツ好きだな」

「高いから普段食べられないからねー。こういう時は思う存分食べないと」

ヒカリは満面の笑みを浮かべてグレープフルーツにかじりついた。

「わっ、このグレープフルーツ美味しい!」

グレープフルーツ好きのヒカリが言うのだから、それは美味しいのだろう。

アキラも自分の皿に盛ってきたサンドイッチにパクつく。

「あ、美味しいわ」

二人とも一気に上機嫌になる。

美味しい飲み物、美味しい食べ物。もう大満足だ。

そう言えば・・・。

アキラはふと疑問に思っていた事を思い出した。

「さっきディナーもあるんだからって言ってたけど、ヒカリどこか予約したのか?」

「んふふ。それは後でのお楽しみ!」

グレープフルーツにかぶりつきながら、ヒカリはそう答えた。

アキラは若干、自分の懐具合が心配になった。

宿泊費だけでも今まででのアキラの生活では考えられない程高額な料金。

その上、レストランで食事までしたら、果たして一体いくら掛かるだろうかと。

しかし、今不安気な表情を浮かべるのはヒカリに申し訳ない。

何より、それは男としてあまりにも情けなさすぎる。

ここは気丈に振舞おうとアキラは息巻いていた。

暫くお茶菓子を食べた後、二人はプールとフィットネスも楽しんだ。

利用した時間も丁度良かったのか、終始二人だけの、ゆったりとした時間が流れていた。

部屋へ戻ってきた二人は暫しの休息。

アキラは持参したタブレットでメールを確認していた。

一方ヒカリはテレビのチャンネルを頻繁に変え、

普段家で見る事が出来ない衛星放送を存分に満喫していた。

「ホテルでこうやって一日中ゆっくりしているなんて初めてかも」

ベッドに寝転がりタブレットを弄るアキラはヒカリにそう話掛ける。

「こういう過ごし方も、偶には良いよね」

ヒカリは嬉しそうに話した。


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思い出はホテルに置いていって3
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